柏原 みき(かしはら みき)さん(写真:左)
1995(平成7)年生まれ。兵庫県出身。園田学園中学校・高等学校卒業後、2014年に筑波大学に入学。在学中に全日本学生バドミントン選手権大会の女子団体・ダブルスで優勝、FISUワールドユニバーシティゲームズ(旧ユニバーシアード)のダブルス3位など優れた成績を残す。2018年、大学時代からダブルスを組んでいた加藤美幸さんと共にACT SAIKYOに入団。2018年、全日本社会人バドミントン選手権大会のダブルス3位、2019年、日本ランキングサーキット大会2位。2021年、ACT SAIKYOキャプテンに就任。
林 樂(はやし もと)さん(写真:右)
1999(平成11)年生まれ。東京都出身。埼玉栄中学校・高等学校卒業、在学中に世界ジュニアバドミントン選手権大会の団体・シングルス2位、全国高等学校総合体育大会バドミントン大会の団体・ダブルス、シングルス3位、インドジュニアのシングルス2位など優秀な成績を収める。2018年、ACT SAIKYOに入団。2019年、日本ランキングサーキット大会でシングルス3位。2021年、ACT SAIKYO副キャプテンに就任。
周南市に本社を構える西京銀行は、2010(平成22)年4月に女性行員をメンバーに実業団バドミントンチーム「ACT SAIKYO」を創部しました。チーム名の由来は「時代を先取りし、地域とのコミュニケーションを大切にしながら活動していく」という思いを込め、「Active」「Communication」「Trend」の3つの英単語の頭文字を取って「ACT SAIKYO」と命名。「山口県をバドミントン王国に!!」を合言葉に、バドミントン競技の普及・促進活動に取り組んでいます。
発足年から好成績を残し、実業団の日本一を決める全日本実業団バドミントン選手権大会でベスト16位入りを果たしました。翌年には日本リーグ(現S/Jリーグ)のチャレンジリーグに初出場し、優勝。2016(平成28)年から国内最高峰の大会である日本リーグ1部(現S/Jリーグ)に参戦し、活躍しています。
●ACT SAIKYOへ入団するきっかけとなったのは…
2018(平成30)年にACT SAIKYOに入団した柏原さんと林さんは、現在チームをまとめるキャプテンと副キャプテン。
キャプテンの柏原さんは、父親が高校時代にバドミントン部に入っていたことがきっかけで小学1年生からバドミントンを始めます。
「小さいころから、サッカーや野球などいろんなスポーツをやってきたんですけど、バドミントンは教室に通って楽しかったのと、父と一緒にスポーツをできたのが楽しかったですね」
その後、筑波大学に入学し、加藤美幸さん(2021年ACT SAIKYOを引退)と出会いダブルスのペアを組むことになります。
「体育教師になる夢があって大学に入学したんですが、加藤とペアを組んで結果を残すことができ、実業団で上を目指したいという気持ちが芽生えました。そして、どのチームに入団するか考えたとき、個人として声を掛けてくださったチームもあってすごく悩みましたが加藤と2人ペアとして採用してもらえるACT SAIKYOに入団しました。『加藤と一緒じゃないと強くなりたくない。カトカシ(加藤・柏原ペア)で世界を目指したい』と思ったんです」
副キャプテンの林さんは、姉の影響で小学2年生からバドミントンを始めました。
「中学校はバドミントンの強豪校に行くことを迷っていましたが、バドミントンの名門・埼玉栄中学校・高等学校から声をかけていただき、『行くしかない』と思って進学しました」
その後は中高とバドミントンに打ち込み、自然と実業団入りを目指すように。
「ACT SAIKYOから声をかけていただいたんですが、山口県のチームだと東京の実家に気軽に帰れる距離ではないので迷いました。でも、必要としてもらえると『チームのために』という気持ちで戦えると思い、入団しました」
●キャプテン、副キャプテンとしてチームに貢献する
入団当初は2人とも自分のことで精一杯になり、先輩やチームメイトに迷惑をかけてしまっていたと振り返ります。
今ではチームをまとめる立場になりました。キャプテン、副キャプテンとして落ち込んだ選手にはなるべく声をかけるようにし、気を配りながらコミュニケーションを取ることでチームの士気を高めます。さらに、チーム全体のミーティングの前日には、2人で2、3時間ほど打ち合わせを行うそう。
柏原さんは「2人で話し合ってもゴールが見えない時もあります。でも、全員に伝わらなくても何人かに理解してもらえればいいなと思って伝えるようにしています」と話します。
「チームで戦いつつ個人競技でもあるバドミントン。一人一人がチームのために、みんなが同じ方向を向くように考えて伝える必要がありますね」と林さん。
柏原さんは「キャプテンとして何ができるかいつも自分に問います。チームに貢献できていることって数少なくて…」と、キャプテンとしての在り方を模索しながらも、責任のある行動を取り、人に見られても恥ずかしくない行動を心がけています。
選手として活躍しながら「チームをよりよく」とチームとしての成長を意識して活動しています。
●似ている2人
使命感のある2人は性格が似ているそうで、口をそろえて「お互いつらくなっても吐き出せず抱え込んでしまうタイプ」と話します。お互いについてどう思うか聞いてみると、柏原さんは「林はしんどい時も『自分がやらなきゃ』という気持ちでチームにいてくれます。私もすごく頼りにしています!」と話すと、「初めて聞いたかもしれない! こんな真正面で聞いたことないです」と林さんは照れ笑い。
林さんは「柏原さんに言ったことがあるんですが、第一印象が本当に怖くて(笑)。大学時代に何連覇もしていたので、絶対に気が強いか真面目過ぎる人かと思っていたら…すごくノリがよくておもしろい人でした(笑)。空き時間に2人でふざけ合うのも楽しくて。それに優しいですし。お互い声をかけ合えるのでいい関係だなと思います」と話します。
お互いに支え合いながら切磋琢磨してきたようです。
●全日本実業団バドミントン選手権大会で創部以来初のベスト4入り
2022年、ACT SAIKYOは実業団チームの日本一を競う全日本実業団バドミントン選手権大会で創部以来初の3位入賞を果たしました。
大会の感想を伺うと「チームとして一体感が生まれた試合だった」と話してくれました。
柏原さんは「もちろん毎回優勝を目指していますが、今回はスタッフも、試合に出る・出ない関係なく、本当にチーム全員が優勝を最優先に考えて挑んだ大会でした。有観客だったこともあり、応援してくださるファンの皆さまの思いを背負って最後まで戦い抜けました。準決勝戦では負けてしまいましたが、一人一人何か感じたのではないかと思います」と話します。
林さんは「私はシングルスで出場しました。苦しい場面で試合が回って来ることも多く、辛かったという思いが強かったのですが、チームのみんなが応援してくれて心の支えになりました。『自分がやらなくては』という気持ちで責任を持って戦えました。苦しかったけど、いい大会でしたね」と振り返りました。
さらに現状のチームについて林さんは「勢いのあるチームになってきました。新人4人が入団し、今年、全日本実業団選手権で優勝経験のある強豪チームに勝てたのがチーム全体の自信につながったと思います」と語ります。
●今後も高みを目指して
さらなる躍進を目指し、練習に励むACT SAIKYOの選手たち。今後の目標について聞いてみました。
柏原さんは「日本最高峰のリーグ戦のS/JリーグではTOP4の壁をなかなか越えられません。個人の強さもそうですが、壁を破るためにチーム力の底上げが必要です」と話します。
「タイトルを取りたいという気持ちが強いです。個人スキルをアップすることで団体戦にも貢献できるし、個人戦でも勝っていける。全国大会での優勝を目指したいです」と林さんも目標を語ります。
●県外から越してきて周南市を拠点に働くようになりましたが、実際に住んでみてどんな印象を持ったのか、普段どんな場所に行くのかインタビューに答えてもらいました。
―― 周南市ではどんなところに行きますか?
林さん 休みの日は、柏原さんとよくカフェに足を運んで、リフレッシュしています。「ここ、おいしそうじゃない?」って情報交換して(笑)。今まで行ったのはガーデンカフェ 日日(にちにち)、+STAND(プラススタンド)、オレンジカフェ、nodoka(のどか)、mucumucu(ムクムク)とか…結構行きましたね!
柏原さん 私はよくコロンバンにも行きます。おじいちゃんおばあちゃんに混ざって一人で、ランチを食べています(笑)。モーニングもおいしいし、ランチの牛スジ丼もおすすめです。後は、JR徳山駅前も新しいお店が増えましたよね。徳山駅前図書館のスターバックスコーヒーにもしょっちゅう行っています。
林さん 12月には徳山駅前の冬のツリー祭りのイルミネーションも見に行きました。周南市は住みやすいですよね、ふらっと気軽に歩ける町です。
―― まちの空気や景色はどうですか?
林さん よく屋外でランニングをするんですけど、周南市の遠石エリアの坂道を走って足がパンパンになります(笑)。ACT SAIKYOのトレーニング拠点のMerry Gateアリーナ(バドミントン用体育館)の周りを走るときは、海沿いの粭島櫛ケ浜線を走って、粭島の手前にあるバス停の「犬帰り」辺りまで行って…景色がきれいだなと思いながら帰ります。走っている間は景色を楽しむ余裕はないですけど(笑)。
柏原さん 35分かけて行って、猛ダッシュして20分で帰るのであまり余裕はないです(笑)。
林さん この前、私の両親が遊びに来て、周南コンビナートを見に港周辺を案内しました。日帰りだったので夜景は見れませんでしたが、カメラ好きの両親が工場の写真を撮影できてよろこんでいました。
●S/Jリーグ山口大会が周南市で開催!
2023年1月28日、3年ぶりにS/Jリーグの山口大会が、キリンビバレッジ周南総合スポーツセンターで開催されます。地元開催ということもあり一層力が入るとのこと。そこで意気込みをお聞きしました。
柏原さん 優勝やTOP4入りが目標でしたが、TOP4に入るのが難しい状況ではあります。それでも山口大会ではたくさんの方が応援に駆けつけてくださるので、今までの取り組みをコートの中で発揮して、何があっても勝たなきゃいけない試合だと思います。プレッシャーや責任感が大きくなりますが、そんなことは言っていられません。勝利を上げたいと思います。
林さん S/Jリーグは各地方で試合が行われますが、みんな山口大会に対する思いは強いです。会場に足を運んでくださるファンの皆さまに恩返しできるよう、勝つ姿をお届けしたいと思います。3年前は観客席からたくさんのファンの方が「頑張れ!」と声をかけてくださり、その声に選手は何度も救われました。
―― 有観客は違いますか?
柏原さん 全然違います! 応援の力ってすごいと感じます。声を聞くと、この人の思いも乗ってるんだと感じて「やらないと!」って気持ちが引き締まります。
林さん 無観客を経験したからこそ、有観客で応援があることのありがたさを感じます。
―― S/Jリーグに来られる、ファンのみなさんにコメントをいただけますか?
柏原さん 久々に私たちのプレーを見ていただける大会が開催されます。ACT SAIKYO全体を見ていただけたらうれしいです。バドミントンの技術的な面もですが、気持ちの面でも、過去より今のACT SAIKYOの方がきっと強くなっています。
林さん 準備の段階はみなさんにお見せできませんが、しっかり準備をして大会に挑みたいと思います。試合をする姿やベンチで応援する姿を見ていただけたらうれしいです。
チームとして一段と強くなったACT SAIKYOの試合は、2023年1月28日に見ることができます。
応援は選手の力になる、ということがひしひしと伝わってきました。ぜひ皆さんもACT SAIKYOの迫力あるプレーを間近で観戦し、地元のチームを一緒に応援しましょう!
認定特定非営利活動法人ACT SAIKYO
https://actsaikyo-badminton.jp/
記事: 西山優歌/ 写真:嶋畑勤
執筆時期:2023年1月
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