1974年、周南市戸田生まれ。高校卒業までを自然豊かな戸田の苔谷地区で過ごし、大学進学のため福岡県へ。卒業後はUターンし、アパレル業界に就職。結婚・出産を機に専業主婦となり、シチューのテレビCMをきっかけに野菜ソムリエという資格を知る。子育ての合間に猛勉強し、2011年に野菜ソムリエを、2020年には野菜ソムリエ上級プロを取得。「野菜は体の栄養に。ヤサイコトバは心の栄養に」をコンセプトに自ら考案した「ヤサイコトバ」を使って野菜の魅力や商品のPR活動をし、2021年、「第10回野菜ソムリエアワード」の最高賞である金賞を受賞。道の駅ソレーネ周南の地産地消レストラン「ベーカリーキッチン菜」でシェフを務めるほか、KRY熱血テレビ「いろどりRecipe」のレシピ考案や、イベントや各種講座、料理教室を全国各地にて開催するなど多岐にわたり活躍中。
花がもつ「花言葉」のような、野菜の言葉「ヤサイコトバ」
里芋は「努力の実り」、白菜は「幸福」、トマトは「平和」など、花につけられた「花言葉」のように、野菜につけられたのが「ヤサイコトバ」。周南市出身の野菜ソムリエ上級プロ・西川満希子さんが「野菜は体の栄養に。ヤサイコトバは心の栄養に」をコンセプトに考案した言葉です。現在、「ヤサイコトバ」がついた野菜は100種類以上。「普通の食卓にのぼる野菜には全てつけ終わったと思います」と西川さん。「ヤサイコトバ」を活用して野菜の魅力や商品をPRする西川さんの活動は日本野菜ソムリエ協会から高く評価され、2021年に開催された「第10回野菜ソムリエアワード」で最高賞となる金賞を受賞しました。
家族への思いやりが「ヤサイコトバ」を誕生させた
西川さんが「ヤサイコトバ」を閃いたきっかけは、息子さんとのやり取りにあります。小学4年から高校まで野球をしていた息子さんは、野球の試合の前日には毎回、験(げん)を担ぐために「カツ丼」をリクエスト。しかし、胃腸があまり強くない息子さんがお腹の調子を崩してしまわないかと西川さんはいつも心配だったそうです。「ほかに験を担げる食べ物はないか」、そう考えたとき、思いついたのはおせち料理でした。「ほとんどが野菜のおせちは、全部縁起がいい料理。料理だけじゃなく、野菜にも意味があればいいのに…、そう思って野菜に『花言葉』みたいな言葉がないのかと調べ始めたんです」。けれども、探しても探しても「花言葉」の野菜版は見つかりません。しかし、そこはポジティブな西川さん、「ないなら私が作っちゃおう!」と驚きの決断に。こうして、「ヤサイコトバ」は誕生することになったのです。
ヒントは、野菜がもつ特性や栄養、歴史など
「ヤサイコトバ」をつける際に参考にするのは、野菜がもつ特性や栄養、歴史、見た目など。西川さんは本を読んだり、農家さんに聞いたりと、とにかく徹底的に調べ、いろんな角度から野菜を知ったうえで、ポジティブな言葉を選んでつけているそうです。例えば、生姜は「合格一直線」。これは、生姜の芽が上へ上へとぐんぐん伸びる様子から、そして、体を温め、風邪予防に期待できることから、受験生に特に食べてほしいという思いもあってつけているとのこと。こうしてつけられた「ヤサイコトバ」は、料理に意味をもたせ、さりげなく愛や感謝を伝えられるツールとして少しずつ浸透し、根強いファンがつくようになりました。
楽しくてためになる「ヤサイコトバおみくじ」
西川さんは「ヤサイコトバ」を広めるために、さまざまな取り組みを行なっています。中でも好評なのが「ヤサイコトバおみくじ」。通常のおみくじと同様に、選んで引いて開くと、「あなたへのヤサイコトバ」を読むことができます。「何が出るのかとワクワクしますし、野菜について知るきっかけにもなります。出た野菜がその方にとってお守り的な存在になるし、その日作るご飯のヒントにもなります(笑)」と西川さん。現在、周南市遠石にある遠石八幡宮内「おまいりカフェ」にあるそうなので、引いてみたい方はぜひ足をお運びください。下関の「カギ印ソース」ともコラボ中なので、気になる方はチェックを。
花についた「花言葉」のように、野菜につく「ヤサイコトバ」を考案した野菜ソムリエ上級プロの西川満希子さんは、自然豊かな周南市戸田の出身。農業を営む祖父母を見ながら育った西川さんにとって、昔から野菜は特別な存在だったそう。2021年、「ヤサイコトバ」を活用した野菜の魅力PRや商品開発が高く評価され、「第10回野菜ソムリエアワード」で金賞を受賞し、現在、大活躍中の西川さんに、周南市の魅力や地元の野菜への想いなどを伺いました。
自然に囲まれて育った一人遊びが得意な「妄想っ子」
高校を卒業するまでの18年間、周南市戸田苔谷地区の豊かな自然に囲まれて育った西川さん。「豊かな自然」というよりも、「山の中」と表現した方が正しいかもしれません。学校までの道のりは長く、車で送り迎えしてもらう日々。近所に同じ年頃の子どももいなかったので、一人遊びが得意になりました。「一人でままごとをしたり、木に登って空想したり。小さい頃は妄想っ子でしたね(笑)」。鳥や植物、もちろん野菜も人に見立て、性格や生い立ち、今思っていることなど、いろんなことを想像して楽しんでいたそうです。そんな西川さんを見守ってくれたのが、両親、祖父母をはじめとする周りの大人たち。西川さんを見かけると必ずと言っていいほど優しく声をかけてくれました。そして、農業を営む祖父母から西川さんはたくさんのことを学んだそうです。
祖父母から学んだ野菜を愛し尊ぶ気持ち
子どもの頃の西川さんにとって、農作業のお手伝いも遊びの一つのようなもの。学校から帰ってきたら、畑や山に入って野菜やシイタケを収穫し、土間でパッキングまでしていたそう。「『野菜は人間と同じで生きている。捨てるのはもったいないし、かわいそう。それに、大切に育てたから可愛い』と、いつもおじいちゃんから聞かされていました。料理好きなおばあちゃんは、野菜を捨てることなく全部料理にします。西川家の食卓には、いつもたっぷりの野菜料理が並んでいました」。西川さんが野菜ソムリエに興味を持ち、「ヤサイコトバ」を思いついたのは、この祖父母の影響がとても大きいといいます。「自然とともに生きてきた二人ですから、必然的に野菜を愛し尊ぶようになったのでは。二人をそんな風にしたのは周南の豊かな自然。つまり、今の私があるのも周南の自然のおかげです」。
シチューのCMがきっかけで野菜ソムリエを知る
西川さんが野菜ソムリエを知ったのは、子育てに専念するため専業主婦をしていたときのこと。「たまたま見たシチューのCMに王理恵さんが『野菜ソムリエの王理恵です』って登場してきて、『野菜ソムリエって何? かっこいい!』と思いました。その頃、ちょうど父が定年を迎えて農業を始めたこともあって、資格があったらいいかもなと思ったのを覚えています」。それから年月が経った2011年、西川さんはあることがきっかけで野菜ソムリエになることを決意します。その「あること」とは、東日本大震災でした。
どんなときでも食べ物は人を笑顔にする
東日本大震災の直後、西川さんは被災地のみなさんに物資を送るボランティア活動に参加。その際に、現地の方と話す機会があり、「食べ物」の偉大な力を改めて感じたそうです。「どんなに大変な状況でも、どんなに心が荒んでいても、食べ物が人を笑顔にすると聞きました。そのとき、絶対に食べ物に関わる仕事をしようと決めたんです」。その後、西川さんは子育ての合間に猛勉強し、念願の野菜ソムリエの資格を取得。現在は、全国に約6万人いる野菜ソムリエの中でも145人しか認定されていない野菜ソムリエ上級プロとして活動しています。
「ヤサイコトバ」で周南の野菜をブランディング
野菜の産地は各地にあれど、西川さんが一番愛するのはやっぱり地元・周南の野菜たち。「昔は里芋が大っ嫌いだったんですけど、夜市の里芋を食べてからは大好物になりました。ほくほく感もきめ細かさも圧倒的で、気になる臭みもないんです。周南の自然の底力を感じましたね」と西川さん。周南の自然に育てられ、野菜の魅力を知ることができた西川さんは、「ヤサイコトバ」を活用して周南に恩返しするのが目標だそう。「『ヤサイコトバ』にはポジティブな言葉しか使っていません。周南の野菜と『ヤサイコトバ』をうまくかけ合わせ、たくさんの人に知ってもらい、味わってもらいたいですね。『周南の野菜は縁起がいい』となったら大成功。そうなるように頑張ります」。
自然が豊かで働く場所もたくさん。何より、人が温かい
周南が大好きという西川さんに、周南の魅力について聞きました。すると、「周南はとにかく温かい地域。『あいさつ日本一のまち』って勝手に思っています(笑)」とすぐに答えが返ってきました。子どもも大人もすれ違うときには必ずあいさつをする、そんな素敵な習慣があるまちだそうです。「もちろん、自然も豊かだし、働く場所がたくさんあるのも魅力。ただ、私にとっては、一人ひとりのご機嫌指数が高く、『みんなで助け合って補い合っているまち』ということに、より大きな魅力を感じます。ご近所さんは良くも悪くもみんな顔がわかり、地域で子育てしているような安心感もあります」。西川さんが考える周南市は、田舎でも都会でもなく、大きな企業とも共存できるやわらかく穏やかなまち。ほかにはない特別な場所だそうです。
今のまま、等身大の周南市であり続けてほしい
周南市の中で西川さんが一番気に入っている場所は、防府市との境目にある「神宮あさひの里」。周南市が一望できる見晴らしのいい場所です。「金剛山や太華山を下に見る絶景スポット。工場夜景もバッチリ見えますし、なんと永源山公園の打ち上げ花火(※)は上から見下ろせるんです。何より星空がきれいで、夏休みの夜には天体観測もしていました」。西川さんの願いは、この美しい景色がいつまでも眺められる周南市が続くこと。「背伸びして都会に見せようとするのではなく、今のまま、山があって海があって、人が助け合って…と、そんな周南市であり続けてほしいです。そのために、私は私のできることを、例えば、『ヤサイコトバ』を使って人と人との心をつなげていくことができればと思っています」と西川さん。西川さんの想いは「ヤサイコトバ」に乗って、きっと多くの人に届くことでしょう。
※毎年恒例の夏祭り「サンフェスタしんなんよう」のフィナーレで打ち上がる花火
ヤサイコトバ
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連絡先:makiko.nishikawa1@gmail.com
記事:藤井 香織 / 写真:嶋畑 勤
執筆時期:2021年9月
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