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アウトドアスポーツやまぐち協同組合 副理事長|福村 紅子さん

子どもたちの生きる力をはぐくむ自由な遊び場で、まちに笑顔と活気を!

アウトドアスポーツやまぐち協同組合 副理事長|福村 紅子さん
01.ヒト

周南市生まれ。徳山小学校、住吉中学校を経て、宇部女子高校(現在の慶進高校)に進学。3歳から水泳を習い始め、中学・高校と水泳部に所属。高校では寮生活を送りながら選手時代を過ごす。スポーツトレーナーを志し、大阪の専門学校で学んだ後、大手スポーツクラブに就職し、神戸に配属。3年後、周南市にUターンし、地元スポーツクラブに勤務。27歳のとき、水泳大国・オーストラリアに留学。帰国後の2007年、水泳教室やコンディショニングを専門とする「International Swimming Design」を立ち上げ、幅広い世代にストレスフリーな泳ぎ方を指導。特に、ベビースイミングの分野においてはYouTubeチャンネル(isdswin)登録者数3万人以上、再生回数1,300万回以上の実積を持つ。2008年、マンツーマンでトレーニングを行う「パーソナルスタジオBco(ボコ)」を立ち上げる。2012年から「はぴスポ」というチームでの活動もスタート。周南市に拠点を置き、下松市や光市を中心に「0歳から10歳までの身体の土台づくり」をコンセプトにした体操教室や水泳教室を開催している。2022年より、アウトドアスポーツやまぐち協同組合の一員として「ハダシランド」の運営にも携わる。「できないことができること」を合言葉に、様々な活動に取り組んでいる。

02.モノとコト

「ハダシランド」は、周南市(周南緑地公園東緑地)や柳井市(やまぐちフラワーランド)を中心に、県内各地で開催されている大人気の遊び場です。夏休みも終盤戦に入った8月下旬、クライミング、スラックライン、ジップラインなど、様々なアクティビティを揃えたイベント会場は、たくさんの親子の笑顔で溢れかえっていました。

ハダシランドとは?

ハダシランドのコンセプトは「できないことができること」。禁止事項をなるべく設けず、保護者同伴の上、子どもたちが自由に過ごせる遊び場です。参加料は無料。利用規約に同意して会員登録する仕組みです。

ハダシランドには、不安定な綱渡りのスラックライン、浮遊感が魅力のジップライン、登ったり跳んだりできるパルクールなど、ハダシで遊べる刺激的な遊びが満載。子どもたちは様々なアクティビティに挑戦しながら、自由な発想で次々に遊びを生み出していきます。

性別、年齢、障害の有無を問わず、みんなで遊べて、誰もが自由に過ごせる。時間が経つのを忘れるほど遊びに夢中になれる場所です。

 

「ハダシランド」誕生のきっかけ

ハダシランドを企画・運営するのは「アウトドアスポーツやまぐち協同組合」。「遊びを通して、子どもが夢中になれる力をはぐくみたい」と想いを同じくする5人の有志によって設立されました。

副理事長でインストラクターを務める福村紅子(ふくむら あかね)さんは、長年にわたり水泳や体操指導を行う中、ストレッチポールというツールを使った指導や育成にあたってきました。転機が訪れたのは2018年。きっかけは、ある人との出会いでした。

「私が開催した講座にたまたま参加していたのが、プロクライマーの三由 野(みよし なお)さんでした。三由さんは日本におけるハイライン(高所綱渡り)の第一人者。命綱なしのハイラインの日本記録を樹立した人です。お互いにハダシでの活動ですし、同じ子育て世代。話を聞けば聞くほど面白い人だなって。すぐに意気投合して、ストレッチポールやスラックラインを組み合わせた、安全性の高い運動機能向上プログラムを一緒に開発していくことになったんです。」

未来を担う子どもたちのために

「ハダシ」というキーワードでつながったお二人。当初、開発したプログラムは、医療や介護の分野で役立てたいと考えていたそうです。

「ある病院で実証実験をしたところ、脳疾患などで車椅子生活を送っている人が、不安定なスラックラインの上では自立できるという驚きの効果が得られたんです。脳幹が活性化されるという医学的な効果を専門家から認められたことで、これを広めていきたいと思っていたのですが、人手不足が叫ばれる医療・介護の現場で実現するにはなかなかハードルが高く…。そこで思いついたのがハダシランドの構想です。これまで培った知見や経験を、未来を担う子どもたちのために活かそうと頭を切り替えました。」

 

行政との運命的な出会い

ハダシランドの実現には、行政との運命的な出会いもありました。

「ちょうどコロナ禍により、公園や緑地が持つ価値が再認識され始めた頃でした。幸いにも、周南市都市整備部 公園花とみどり課の職員さんにお会いする機会があり、ハダシランドの構想をお話したところ、『まずは社会実験として、市内の公園で始めてみては?』と背中を押していただいたんです。この職員さんとの出会いがなければ、ハダシランドは生まれていなかったと思います。」

 

驚くべきハダシの効果

行政の協力のもと、2022年2月、記念すべき第1回目のハダシランドが周南市児玉公園で開催されました。始めたのが真冬ということもあり、ハダシで遊ぶことにとまどう子も多かったのだとか。

「最初は『寒い!痛い!』と言っていたお子さんも、慣れてくると『足がぽかぽかする』『足が気持ちいい』と言って元気に走り回るように。その様子を見て親御さんも驚かれていましたね。」

かつては小学校に入学するまでには、ほとんどの子どもの土踏まずの形成が終わっていましたが、今は未形成で就学している子どもも少なくないといいます。ハダシの効果について福村さんはこう語ります。

「土踏まずができると、身体のバランスがとれて、運動能力がアップします。以前、保育所で検証してみたところ、子どもたちがハダシで1時間ほど外を走り回っただけで、土踏まずができていたんですよ!」

まさに驚くべきハダシ効果です。

 

持続的な取組でリピーターを確保

ハダシランドのこれまでの開催回数は100回以上。初回は50人だった来場者数は、のべ30,000人以上。しかもリピート率は70%超え。たった2年で会員数は約5,000世帯というのだから、その人気ぶりがうかがえます。

2023年12月、さらに嬉しいニュースが舞い込みます。未来のパブリックを示すプロジェクトを発掘・応援するアワード「NEXT PUBLIC AWARD 2023」の公園・道路部門で、ハダシランドが初代優秀賞を受賞したのです。受賞を機に、行政や企業からの依頼も増え、活動は県内外にどんどん拡散しています。

 

眠っていた能力が開花する

今の子どもは「できないのではなくて、体験したことがないだけ」と語る福村さん。ハダシランドへの想いを次のように語ります。

「運動が苦手というお子さんが、ハダシランドでは爆発的な能力を発揮することもあります。できないことができたときの子どもたちの誇らしげな顔を見ると、こちらまで嬉しくなります! もし、大人ができないような難しいことを子どもがクリアできるようになったら、大きな自信になるはず。その小さな成功体験が積み重なって、生きる力へつながっていくのだと信じています。この楽しさを多くの人に知ってもらうためにも、ぜひ大人もチャレンジしてほしいですね。」

ハダシランドで様々なアクティビティを体験することで、まだ見ぬ自分の可能性に出会えるかもしれません。考えただけでなんだかワクワクしてきませんか? 百聞は一見に如かず。ぜひその楽しさを体感してみてください!

 

03.インタビュー

生まれも育ちも周南市。一度、地元を離れたものの、Uターンして周南市で起業した福村紅子さん。これまでどんな道のりを歩んできたのでしょう?

一番落ち着くのは水の中

周南市での幼少期の思い出

小さい頃からハダシで過ごすのが好きだったという福村さん。小学校の6年間も半袖&ハダシで乗り切り、めったに風邪を引かなかったそうです。

「昔はハダシの子がほとんど。靴下をはいている子の方が少なかったですね。私が通っていた徳山小学校では、寒い時期に乾布まさつも行われていたんですよ。そのせいか、全国でも健康優良学校に選ばれていました。」

続いて、周南市での思い出を聞いてみました。

「小さい頃から海が大好きでした。私が見ていたのは、丘から見る海ではなくて、沖から見る海やまち。父親が操縦する船に引かれてウエイクボードで水面を滑走したり、海で泳いだり、無人島で過ごしたりと、アクティブに過ごすことが多かったです。3歳から水泳を始めたのですが、水の中にいる方がすこぶる体調がいいんですよ。前世は河童だったのかもしれません(笑)。」

笑顔で話しながら場の空気を和ませてくれる。そんな福村さんの明るさとフレンドリーさは天性のもの。でも実は、小さい頃の紅子ちゃんはとても引っ込み思案だったのだとか。

「意外に思われるかもしれませんが、人前に立つと緊張して涙が出るタイプ。大人しくて、いつも親の後ろに隠れている感じの内気な子でしたね。」

 

選手を影で支えるスポーツトレーナーの道へ

福村さんのご実家は創業105年を誇る株式会社原田屋。繊維資材の卸販売に始まり、タオルや進物用品、近年は美容・健康事業、エンディング事業など、幅広いビジネスを手掛けている老舗です。

原田家の家訓は「個性尊重」。「やるからにはその道のプロを目指しなさい」という父親の教えを守り、紅子さんは水泳一筋。水泳選手をケアするスポーツトレーナーを目指して、大阪の専門学校に進学しました。

「トレーナーは、健康管理やケガの予防など、様々な面から選手を支える仕事です。選手時代から試合の合間にチームメイトとマッサージなどのケアをし合っていたこともあり、技術指導を行うインストラクターというよりは、選手を影で支えるトレーナーの方に興味を覚えました。」

卒業後は神戸にあるスポーツクラブでトレーナーとしての経験を積んだ後、周南市にUターン。地元のスポーツクラブで3年間トレーナーとして働きました。

「何事も3年周期なんですよ。飽きちゃうんでしょうね(笑)。当時、兄がアメリカの大学で学んでいたこともあり、海外への憧れも手伝って、水泳大国であるオーストラリアにコーチング留学しました。」

27歳のとき、ワーキングホリデービザを活用して渡豪した福村さん。各地を転々としながら、水泳インストラクターやライフセーバーの資格を取得。メルボルンで開催された2007年世界水泳選手権ではボランティアを経験するなど、濃い1年間を過ごしました。

 

楽な身体の使い方を知ることでもっと自分にワクワクしてほしい!

帰国後、これまでの経験を活かして周南市で起業することを決意した福村さん。気軽に参加できるベビースイミングをいち早く取り入れて、水泳教室「International Swimming Design」を開講しました。

「通常、けのびはこう、バタ足はこうと、カタチから入りますよね。でも、泳げていることを実感できたら、呼吸づかいが自然に上手くなって、楽に泳げるようになるんです。だから教室では、『水を感じて、水と仲良く…』と声掛けをしながら、動きやすい身体の使い方を教えています。」

福村さんの活動は水中だけにとどまりません。マンツーマンで陸上でのトレーニングを行う「パーソナルスタジオBco(ボコ)」も運営しています。

「Bはbalance、beauty、body、coはcore、controlの頭文字を合わせた造語です。それぞれの年代やその人の個性、身体に合った運動や食事を提案しています。」

また、0歳から10歳の身体の土台づくりをコンセプトにした「はぴスポ」では、水陸からのアプローチで、保育所での指導、プログラム開発、指導者育成、講演活動など、活躍の幅をどんどん広げています。

多忙な日々を送る福村さん。頼りにしているのは自分の感覚だといいます。

「いい・悪いではなく、合う・合わないが判断基準。どんな食べ物・どんな服なら心地良くて、より良いパフォーマンスが出せるのか。突き詰めれば自分理解ですね。」

自身のコンディションを整えるために大切にしているのは、一人の時間なのだとか。

「どんなに遅く帰宅しても、1時間半くらい湯船に浸かるようにしています。出る汗の感覚を頼りに、お湯を熱めにしたり、ぬるめにしたりして、身体をリセットしています。」

 

やっぱり周南市が好き!育ててくれたまちに恩返しを

進学や就職で一時は離れた地元。そもそもなぜ周南市で起業されたのでしょう?

「海も山もすぐそばにあって、とても住みやすいのが周南市の魅力です。生まれ育ったまちなので、顔が見える安心感もありますし、活動を応援してくれる人もたくさんいます。一度離れてみて分かったのですが、やっぱり周南市が好きなんですよね。結婚するときには、夫に『転勤はありますか?』って確認したくらいですから(笑)。」

活動を通じて、子どもたちの感じる力や身体の動かし方について、以前から課題を感じていたという福村さん。その想いは「ハダシランド」へと結びついていきました。

「最初は子どもを対象にした取り組みでしたが、気がつけばお母さんやお父さん、おじいちゃん、おばあちゃんと3世代で楽しんでいる姿も見られるようになりました。想像以上の波及効果がありましたね。お孫さんを連れてきたおじいちゃん・おばあちゃんが、誰よりも上手かったりするんですよ。考えてみたら、木登りをしたり、野山を走り回ったりと、ハダシで遊んでいた世代なんですよね。危ないことも知っているから、足の使い方や身のこなしが全然違う。危機管理能力が自然と身についているんです。実体験の大切さを改めて感じました。」

今後は、行政、民間企業、教育機関など、多方面と連携をとりながらハダシランドを波及させていきたいと語る福村さん。そこには周南市への恩返しの想いも込められています。

「これまで色々な人との出会いによって様々な活動を続けられています。ハダシランドもそのうちの一つ。『やってみなよ!』って応援してもらえるから頑張れる。周南市はチャンスをもらえる懐の深いまちだと感じています。」

明るくて真摯な福村さんのお話は、面白くてためになるものばかり。あっという間に時間が過ぎてしまいました。進化するハダシランド、そして福村さんの今後の活動が楽しみです!

04.関連リンク
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