鹿野渋川地区で食の担い手として、新商品開発を行う地域おこし協力隊を募集します! 【2023年11月30日まで】
山口県周南市北部の位置する鹿野地区渋川地域は、中国自動車道鹿野インターから車で約10分というアクセスの良さに加え、渋川の清らかな水、きれいな空気、四季折々の自然が織り成す里山風景など、たくさんの魅力が詰まった中山間地域です。地域内には、源泉掛け流しの「石船温泉」、全国的にも珍しい宝くじ当選祈願祭で知られる「宝作神社」などの観光スポットも点在。長野山山頂に広がる「長野山緑地公園」のキャンプ場も擁し、シーズンには多くの家族連れで賑わいます。
取材に訪れた日は、クリスマス寒波の影響により、思いがけず一面の銀世界。山はうっすらと雪化粧され、木々に残った氷が陽の光に照らされてキラキラと輝いていました。四季折々に豊かな表情を見せる同地域ですが、冬の雪景色もまた格別の美しさです。
現在、渋川地域の住民は約60名。子どもから大人まで地域住民が一体となったさまざまな活動を展開しています。そのうちの一つ、「渋川をよくする会」は、平成15年の発足以来、渋川に暮らす人々が「住んでよかった」と思える、また若い人たちも「住みたくなる」地域づくりをめざして、活動に取り組んできました。さまざまな活動を続ける中で、地域内外の交流が進み、生産・加工・販売に取り組む「農事組合法人渋川」の設立、旧渋川小学校の跡地を利用した交流拠点「渋川ふれあいの家」や「しぶかわ工房」の建設など、多くの成果を出してきました。
でも、どうしてこんなに活動が盛んに行われているのでしょう? その秘訣を探るべく、「渋川をよくする会」代表の安永芳江さん、下渋川自治会長の一原英樹さんに、お話をうかがいました。
活動の源泉といえるのが、渋川地区の「生活改善実行グループ」です。生活改善実行グループとは、戦後全国的に展開された生活改良普及事業の一環で、農家女性の自立や生活向上を促すためにつくられた女性組織です。各地でグループが発足する中、渋川地区でも安永さんが中心となって昭和38年にグループを立ち上げました。当時は、農作業中心の生活のため、農家に嫁いだ女性は、家を空けることも、集まっておしゃべりすることも難しい時代。そこでまず、皆がいつでも話せる集会所の建設を計画しました。
安永さん:メンバー全員でコツコツと積立を続け、県からの借入金と合わせて、昭和54年に小さな集会所を建てました。
一原さん:生活改善実行グループだけでなく、自治会や消防団の集まりにも利用するなど、集会所を中心に地区内の交流が活発になっていきました。
集会所には小さな加工場も併設。女性たちは借入金の返済のため、こんにゃくなどの加工品の製造・販売を開始。また、市(旧鹿野町)から「長野山山頂にある緑地公園の食堂(現在の天空カフェ)」の運営も請け負いました。
安永さん:根底にあるのは、「自分たちの地域は自分たちで守る」という思いです。そして、「これはいい!」と思ったことはすぐにやってみる。実行力の足跡が今につながっているのではないかと思います。
一原さん:渋川地区の女性は、とても明るく、たくましく、しなやかです。社会的・経済的能力を高めながら、活動の場をどんどん広げていきました。
転機が訪れたのは平成15年。徳山市、新南陽市、熊毛町との合併による周南市の発足です。
安永さん:合併により旧鹿野町は周南市として生まれ変わりました。これを機に、地域の困り事が本庁に届かなくなるのではないかという危機感を覚えました。そこで、生活改善実行グループが中心となり、地域コミュニティ組織「渋川をよくする会」を結成しました。
一原さん:荒れ地に花を植える環境美化作業から始まり、清掃活動、伝統文化の掘り起こし、地区内外の人との交流活動など、地区住民主体の取り組みをスタートさせました。
平成22年には、新たな交流拠点として、旧渋川小学校の跡地を利用した「渋川ふれあいの家」、併設する加工所「しぶかわ工房」を建設。平成23年からは、75歳以上の住民に「かあちゃん弁当」の配布をスタートしました。これまでお世話になった方々へのお礼と安否確認も兼ねて、地区内の独居家庭に恵方巻やおはぎなどの配布も行っています。
特に活発なのが、農事組合法人渋川の農産物加工部「しぶかわ工房」の活動です。朝早くから女性たちが工房に集まり、地区内でとれた農産物を使って、こんにゃくやかしわ餅、漬物などの加工品づくりを行っています。
「しぶかわ工房」の代表を務める野村三恵子さんに、加工品づくりについてお聞きしました。
野村さん:長野山の生活改善実行グループのレシピを中心に商品化しています。かしわ餅に入れるよもぎは地区内で摘んだもの、中のこし餡も手作りと、手間ひまかけたおいしさです。「このかしわ餅を食べたら、ほかのは食べられない」と言う人もいるほど。こんにゃくは、できるだけアクの量を減らしているので、えぐみがなく、とろけるような食感に仕上がります。作った加工品は、月・水・金・土曜日に、鹿野地域で特産品などを販売する「ふる里マルシェかの」、JA山口県の農産物直売所「菜さい来んさい」、道の駅「ソレーネ周南」などに出荷しています。また、長引くコロナ禍で、お弁当の注文も増えています。地元のお米や野菜を使っているからとても喜ばれるんですよ。でも、加工品をつくる人と、その原材料となる米や野菜を栽培する人がほぼ同じメンバーなので、商品開発やイベントなど新しいことをやろうと思っても手が回らないのが現状です。
こうした課題を解決するために募集するのが「地域おこし協力隊」です。渋川での「地域おこし協力隊」の受け入れは今回が初めて。「しぶかわ工房」の加工品の製造技術を習得しながら、原材料となる農作物を鹿野地区や周辺地域から確保する仕組みづくりを行う方を募集しています。
安永さん:原材料を鹿野地区内から仕入れたり、市街地に住む方々との体験交流活動を活用して生産したりできるようになれば、新製品の開発や生産量の増加も可能になります。ここで作った加工品がたくさん売れれば、地域の活性化・持続化につながります。明るくて気さくな方、意欲のある方の応募をお待ちしています!
一原さん:できれば、渋川をよくする会の活動にも参加してもらって、 SNSなどを通じて渋川の良さを外にどんどん発信してもらえたら嬉しいですね。それが呼び水となって、交流人口や移住人口が増えることを期待しています!
渋川に移住した若者の声もお聞きしてみました。板垣さん兄弟は、周南市の新規就農者パッケージ支援制度を活用して、平成30年から渋川地域でわさびとトマトの栽培に取り組んでいます。
人夢さん(兄):渋川地域は人々のコミュニケーションが良好です。人と人との距離感がちょうどいいので、すんなりと溶け込めました。夏は涼しいので、農業にも適しています。
望夢さん(弟):新しく入られる地域おこし協力隊の方が、地域内外の人と人をつなぐ架け橋になってくださったら、もっといろいろなことができるようになると思います。一緒に渋川を盛り上げていきましょう!
田舎暮らしを検討されている方、地域おこし協力隊に興味のある方は、ぜひ一度、渋川に足を運んでみてはいかがでしょうか。住民のみなさんが温かく迎えてくださいますよ!
地域おこし協力隊の隊員期間はおおむね1年以上3年以下。地方自治体の委嘱を受け、地域で生活し、各種地域活動に協力していただきます。活動費などの詳細は、以下をご確認ください。
【令和5年9月29日追記】
隊員が取り組む活動内容として、これまで『農産加工品の材料となる農作物を確保する仕組みづくり』として募集しておりましたが、活動内容を見直し、『地域で採れる農作物を活用した新たな商品開発や既存商品の改良』に取り組んでいただく隊員として募集することにいたしました。
詳しくは下記URLをご覧ください。
関連リンク
▼[渋川地域・地域おこし協力隊情報](移住・交流推進機構(JOIN)運営サイトより)
https://www.iju-join.jp/cgi-bin/recruit.php/9/detail/55093
▼周南市公式ホームページ「周南市地域おこし協力隊を募集します」
https://www.city.shunan.lg.jp/soshiki/15/93845.html
▼鹿野エリア観光情報(周南市観光交流課「Visit Shunan Days 365」webサイトより)
https://visit-shunan.com/kano/
記事:小野 理枝 / 写真:嶋畑 勤
執筆時期:2023年1月
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